いのちをいただく(No.123)

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坂本さんは、食肉加工センターに勤めています。 牛を殺して、お肉にする仕事です。 坂本さんはこの仕事がずっといやでした。

牛を殺す人がいなければ、牛の肉はだれも食べられません。 だから、大切な仕事だということは分かっています。 でも、殺される牛と目が合うたびに、仕事がいやになるのです。 「いつかやめよう、いつかやめよう」と思いながら仕事をしていました。

坂本さんの子どもは、小学3年生です。しのぶ君という男の子です。 ある日、小学校から授業参観のお知らせがありました。 これまでは、しのぶ君のお母さんが行っていたのですが、 その日は用事があってどうしても行けませんでした。 そこで、坂本さんが授業参観に行くことになりました。

いよいよ、参観日がやってきました。 「しのぶは、ちゃんと手を挙げて 発表できるやろうか?」 坂本さんは、期待と少しの心配を抱きながら、小学校の門をくぐりました。 授業参観は、社会科の「いろんな仕事」という授業でした。 先生が子どもたち一人一人に「お父さん、お母さんの 仕事を知っていますか?」 「どんな仕事ですか?」と尋ねていました。 しのぶ君の番になりました。

坂本さんはしのぶ君に、自分の仕事について あまり話したことがありませんでした。 何と答えるのだろうと不安に思っていると、しのぶ君は、小さい声で言いました。 「肉屋です。普通の肉屋です」 坂本さんは「そうかぁ」とつぶやきました。

坂本さんが家で新聞を読んでいるとしのぶ君が帰ってきました。 「お父さんが仕事ばせんと、みんなが肉ば食べれんとやね」 何で急にそんなことを言い出すのだろうと 坂本さんが不思議に思って聞き返すと、 しのぶ君は学校の帰り際に、担任の先生に呼び止められて こう言われたというのです。

「坂本、何でお父さんの仕事ば普通の肉屋て言うたとや?」 「ばってん、カッコわるかもん。一回、見たことがあるばってん、  血のいっぱいついてからカッコわるかもん…」 「坂本、おまえのお父さんが仕事ばせんと、先生も、坂本も、校長先生も、 会社の社長さんも肉ば食べれんとぞ。 すごか仕事ぞ」

しのぶ君はそこまで一気にしゃべり、最後に、 「お父さんの仕事はすごかとやね!」と言いました。 その言葉を聞いて、坂本さんはもう少し仕事を 続けようかなと思いました。




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